「先生、元気出して・・・。ヨハンはこれで大丈夫・・・。また頑張ってくれるから・・・」

そろそろ収録も終わる時間なので先生の長話を聞けそうにない。
オレは当たり障りなく断った。



収録が終わり、ヨハンが一直線にオレたちの元へとやってきた。

「もぅ、なんだよ。二人でずっと収録中仲良く喋ってて・・・。オレの事ちゃんと見ててくれたか?」

ヨハンは口を尖らせて、ちょっと拗ねたように話し掛けてきた。

「はい、見てましたにゃ。ヨハン君の勇姿をこの先生の両目に焼き付けるほど、しっかりと見てましたにゃ」
「ははっ!分かったよ、先生。ありがとう。でも、な〜んか十代と仲良くなっちゃったみたいで・・・。紹介しなきゃ良かったかな。オレだけ、除け者みたいだし」
「そんな事ないにゃ〜。ヨハン君あっての先生ですにゃ。機嫌を直してにゃ〜、ヨハン君。そうだにゃ!これから三人で銀座でお寿司でも食べましょうにゃ。ね、ね?」

先生はオレとヨハンの背を両手で押しながら歩き始める。

「オレ・・・お腹すいてるからたくさん食べちゃうからね」
「了解ですにゃ!領収書を切るから全然OKですにゃ」

調子の良い素直な先生。
明るく無邪気なユベル。
優し過ぎるヨハン。
オレの中で、いつの間にか・・・この生活を続けていきたいと、憧れのような想いが芽生えている。
三人を想い、オレはそう思うのだった・・・。






昨日は生番組という事で仕事に復帰したヨハンだったが、今日はまた、オレに付き合って休んでいる。
が、さっきからずっと玄関からインターホンが鳴っていてとても休めない。
ヨハンとユベルはそれを無視していたが、とうとう耐え切れずユベルが口を開いた。

「ヨハーン・・・。大徳寺だろう、たぶん・・・」
「あぁ・・・そうだろうな・・・」

ヨハンが面倒くさそうに玄関に行く。
しばらく玄関で問答を繰り返し、それが終わるといつもの光景が目に映った。

「おはようございますにゃ♪」
「あー、大徳寺・・・おはよー・・・」

ユベルは目も合わさずに返事を返した。
今日のスケジュールにも穴が空き、先生は事務所で上司に叱られて来たに違いない。
笑顔で入ってくる先生が痛々しい。


・・・。


リビングで先生とヨハン、そしてオレも席に座り、ヨハンに仕事を再開するように説得する。
ヨハンはオレに耳打ちをし、仕事に出かけてもオレが逃げ出さない事を条件に明後日からの復帰を約束した。
ホッとした様子の先生はすぐに事務所に電話をかけて報告する。
それから今日は四人で食事をする事にし、オレは先生の買い出しに付き合った。
買い出しの帰り道、先生が呟く・・・。

「十代くん、今日こそ聞いてくれますかにゃ?先生の心の傷を・・・そろそろ聞きたくなってきたでしょ?十代くん」

先生の心の傷・・・。
どうしても言いたいんだろうな・・・。
どうしよう。



聞く
聞かない